2014年9月22日月曜日

精神保健福祉士と自由を望まぬ人30

 終了後、野間はすぐに病棟に向かった。小林に会うためだ。

 病棟に入ると、探すまでもなく、目の前のフロアーでテレビを見ている小林を見つけた。
 普通に座っている様子を見て、やっぱりサボりかとがっくりしながら声をかけた。
 「小林さん。」
 小林は、慌てる様子もなく「ああ。こんにちは。」と答えて、またテレビに向き直った。
 「あっ。あの。1回目のグループワークが今終わりました。小林さんは体調不良ということでしたが、もう大丈夫なんですか?
 テレビを見たまま、考えているのか小林の反応がない。しばらく待ったあと、野間が「あのぅ」と話しかけると、今度はさっと小林が振り返った。そして、ニコニコとした笑顔で「はい。大丈夫です。失礼しました。時々、急に気分が悪くなる時があります。疲れのせいかもしれません。けど、今度は体調も整えてちゃんと出たいと思っていますから、よろしくお願いします。」と話した。

 野間は、笑顔で、こちらが望む模範解答をあっさりと口にする姿に違和感を持った。違和感を持ったが、だからどうだという理由は見つけられない。
 散歩に行く、という小林をただ見送った。

 相談室に戻る途中、偶然に福田と会った。
 福田はすぐに今日のグループワーク様子を尋ねてきた。野間は、導入としては上手くいったと思う、として、患者の反応などを伝えた。
 そして、小林が欠席して病棟でテレビを見ていた話をした。
 すると、福田は冷静に答えた。
 「そのように話すということは、野間さんとしてはサボりじゃないかと思っているんですね。私がなぜそう思ったのかというと、」
 「はい。そう思いました。特別体調が悪そうに見えませんでしたから。」
 「なるほど。病棟で普段から様子を見ている野間さんであれば、そういった判断もつくのでしょう。これが仮に私なら、」
 「それから、福田さん。それよりも気になるのは、小林さんは体調不良についてしっかりと説明して、しかも次回はちゃんと出ると笑顔で言うんです。これって何だかおかしくありませんか?」



(つづく)




 

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