2014年9月16日火曜日

精神保健福祉士と自由を望まぬ人29

 検温の時間が終わり、解散となった時、野間は小林に声をかけた。
 「おはようございます。」
 小林は予想していたかのように、落ち着いた声で応えた。
 「おはようございます。」
 「グループワークに参加を希望していただきありがとうございました。」
 「いいえ。いいリハビリですね。私も頑張ります。」
 そう言って、一礼し立ち去った。

 優等生のような回答。しかし、感情がこもっていない。用意していたセリフを読んだだけのような、そんな印象を持った。

 結局、グループワークの参加患者は7人。
 まあ最初だからこんなものだろう、ということでこれ以上増やさず実施することになった。
 第1回目は、野間が担当して全体のオリエンテーションと、グループづくりのための自己紹介やアイスブレークとして簡単なレクリエーションを行う。
 グループは、「クローズ」で行うため、病棟ではなく、小会議室を借りて行っている。
 ちなみに、「クローズ」は決まった参加者で限定して行う形式のもので、「オープン」は誰でも途中参加できる形式を言う。「クローズ」は、決まった人だけで継続的に話すので、個人的な話をしやすくなる。不安や悩みを吐露するにはクローズグループである必要がある。そのために、場所も閉鎖した空間とする。

 当日、師長と野間の二人でのぞむ。星原や他のスタッフメンバーも参加を希望したが、スタッフが多数になってしまうと、参加患者が委縮し発言しにくくなるため、野間は断った。
 患者の参加は6名。しかし肝心の小林がいない。
 同席している師長も理由は分からないとのことなので、野間がPHSで病棟に電話した。
 電話に出たナースによると、小林は、体調が悪いので欠席すると言ってきたらしい。
 野間は、やはりという気もしながら残念と肩を落とした。しかし、だから中止というわけにも行かず、会を進めることにした。

 師長の演説の後、まずは、このグループを「一歩の会」と命名すると皆の話し合いで決めた。
 自己紹介では、流暢に話す者や、緊張した様子で直立不動で話す者、ボソボソと小声の者などさまざま。
 最後に、ミニゲームをした。緊張した患者にも笑顔が見られて、野間はひとまずホッとした。
 楽しいと感じることは、継続して参加するための、当初の動機づけの1つとなる。


(つづく)



 

0 件のコメント:

コメントを投稿