2014年9月12日金曜日

精神保健福祉士と自由を望まぬ人28

 「集団精神療法は、プログラムをやればいいというものではなく、選定と喚起が肝心です。そもそも、」
 野間があわてて制する。
 「なっなるほど。確かにそうですね。どうするか、みなさんは何かご意見はありませんか?」
 すると、星原が「野間の方で考えてることがあるんだろ。まず出したらどうだ。」と。
 師長も「それがいいわね。野間さん。お願いね」とつづく。
 それならと野間は話し始めた。
 「このグループワークの目的はリハビリです。それには、患者の主体的な参加が必要ですから、一つは全体への参加呼びかけ、それからもう一つが個別の患者への声掛けをしてはどうかと思っています。」
 成宮が「異議なし!」と。
 師長「それじゃあ、病棟のみんなが集まる朝の検温の時に野間さんから言ってくれる?
 「はい。分かりました。」
 そして、個別に患者を誘うのはそれぞれで判断して行うということとなった
 野間は、もちろん、小林を誘うつもりだ。


 次の日の朝の検温。
 「リハビリが目的よ。すぐに退院しなさいということじゃないから不安に思わないでくださいね。」
 そう師長が補足しながら説明した後、野間が具体的な内容を説明。病棟の患者達がじっと耳を傾けていた。もちろん、その中には小林もいる。
 最後に「それでは、今の時点で参加してみようと思う方はいますか?」と尋ねた。
 パラパラと数人が手を上げる。割と若く入院期間の短い人がほとんど。
 野間は、まあ予想通りだなと見渡した。その途中、はっと目を疑った。小林が手をあげていたのだ。
 すぐに退院ではないとはいっても、退院に繋がりそうなプログラムである。それに、個別の勧めもないのに、小林が自ら希望するとは思っていなかった。野間は驚いた。
 あんなに退院に過剰に反応して不穏になったのは何だったのか、不思議でもあった。



(つづく)




 

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