2014年7月22日火曜日

精神保健福祉士と自由を望まぬ人22

 野間は、スッキリとしたわけではない。複雑な気持ち。山崎が協力すると言ったわけでもない。けど、前に進む力をもらった気がした。
 よしっと前を向いて歩き始めた。

 相談室に戻り、グループワークの具体的な企画案を考え始めた。
 すると、珍しく事務長の岩田が訪ねてきた。
 「おう。じゃまするよ。忙しそうだね。野間君。」

 岩田事務長は、50代の男性で、背が高く細身で猫背。よく眉間にシワを寄せて、神経質そうな顔で歩いている。
 野間は、病院の採用試験の面接で初めて、この岩田に会った。
 その時、「精神保健福祉士にも病院の経営のことを考えてもらわないといけないから、採用になったらそのつもりで考えてもらえますか?」と質問されたのが印象に残っている。
 もちろん、その時は「はい。もちろんです。考えます!」と答えた。答えはしたが、いやらしい質問する人だなぁと思っていた。
 なぜなら、精神科病院の一番の収入源は入院患者の医療費だ。精神保健福祉士は、精神科病院に長期間入院している患者の退院を促進するために国家資格を与えられた。その精神保健福祉士に経営を考えろと言うのは、つまりあんまり退院させるなよ、ということだ。それを採用試験を受ける弱い立場の精神保健福祉士に言ったわけだ。当然、嫌とは言えない。相手に選択の余地を与えずに、立場を利用して釘を刺したのだ。
 精神保健福祉士として頑張れば頑張るほど、必然的に対立してしまう相手。それが事務長だと言っても言い過ぎではない。

(つづく)



 

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