2015年4月3日金曜日

精神保健福祉士と自由を望まぬ人47

 野間は酒は得意ではないし、先輩の酒豪ぶりを知っていたので躊躇した。それでも、何か答えが出ればという気持ちで行くことにした。
 「二人だけじゃないですよね。」
 そう聞くと、「何言っちゃってんのよ。マンツーマンよ! マンツーマン!」そうニヤニヤして言った。
野間が驚いていると、「うそうそ。あと何人か来るわよ。」と。
 「あと何人かとは誰ですか?」
 「えっと。これから招集をかけるわ。」
 そう言って相談室を飛び出して行った。

 待ち合わせの店に着いた。如何にも古くからあるような、古びた小さな焼き鳥屋。
 中に入ると、腰の曲がったおばあちゃんが笑顔で迎えてくれた。
 通されたのは奥の畳部屋の個室。
 開けられたふすまの奥には、机に伏せた成宮先生。すでにできあがっている様子。そして、その向かいにいたのはナースの藤さんだ。
 野間は、成宮先生は予想通りだったが、藤さんにはびっくりした。それを察したのか藤さんから言ってきた。
 「私が飲んでたら勝手に加わってきただけよ。こんな飲兵衛医師と一緒にしないで。」
 黒人歌手さながらのこんもりしたパーマ頭をゆらしながら弁明している。
 野間が苦笑いしながら隣に座ろうとすると、「さて、あとはみんなでやってよ。わたしゃ帰るよ。」と言って立ち上がった。
 すると、そこへ「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」と先輩が入ってきた。
 藤さんが固まった。それは、先輩の奥に師長が見えたからだ。
 「あらー、師長?!」
 「あら藤さん。こんにちは。一緒に飲めてうれしいわ。」
 そう言って腰を下ろした。

 藤さんは腰を下ろさざるを得なかった。年寄りは礼儀を重んじる。藤さんは、師長を差し置いて帰るに帰れなくなったのだ。

(つづく)



 

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