2015年3月8日日曜日

精神保健福祉士と自由を望まぬ人46

 野間は誘われるまま、星原について、作業療法棟に向かった。
 ふらふらと歩きながら、野間は話したが、その話題にもっと触れたいような、触れたくないような、躊躇していた。
 しかし、スタッフルームに着くと、星原は躊躇なかった。
 「なんだよ。そんなことか。病院は加害者だよ。そりゃあ、患者から見れば拷問だと受け取った奴もいるだろうよ。そういうことをしていたんだからな。それを否定することはできない。ただし、過去の病院がそうだったのであって俺達じゃねえよ。そうだろ?」
 そう言い放った。
 さらに、その問いに応じられずにいる野間を見かねて、更に言った。
 「過去の偉そうなドクター連中がやったことだ。俺達はちゃんと患者に向き合っている。患者のためを思ってやってるじゃねえか。俺もお前もな。」
 励まそうとしていることは分かる。ありがたいと思う。
 野間は「分かったよ。ありがとう。」そう言って、部屋を出た。

 しかし、何だか腑に落ちない。
 単に過去のドクターや看護師が悪い奴らだったということだろうか
 確かに、何の科学的根拠もないのに頭に電気を流して失神させるなんて、正気とは思えない。それも、嫌がる患者を押さえつけてである。
 そもそも、ドクターも看護師も、人を助けたくてその道を志したはずだ。それがなぜ、治療だからということだけで、そこまでできるのだろうか。
 そうこうしているうちに、いつのまにか夕方になっていた。野間は相談室に向かった。

 相談室に着くと、元気な声が飛んできた。
 「おかえりンゴー!」
 先輩だ。相変わらずのテンションでちょっとひきながら。
 「帰りました。」と応えた。
 すると、先輩は嬉しそうに近づいてきて「ねぇねぇ。スパイ大作戦はどうだった? 獅子丸って命名された? それとも、ケムマキ?」と聞いてきた。山田さんのことだ。
 野間は少し躊躇したが、拷問の話をした。それから、星原が過去の悪いドクターのやったことで自分たちには関係ないと話したが、どうも納得できていないということも。
 そして、ウンウンと聞いてくれている先輩に尋ねた。
 「先輩はどう思いますか?」
 うーん。と考え、「そりゃあさあ、続きは飲み屋で話そうよ。たまにはいいでしょう。」そう笑った。

(つづく)



 

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