「先輩は電気ショック療法ってどう思いますか?」
「え? ESね。」
「はい。」
「う~ん。そうねぇ。どうかなぁ。けど何で?」
「いや。実は今日、病棟の倉庫にあった古いカルテを見たら、 カルテに『ES』 というゴム印がたくさん押されているのを見ました。 それを見たら、怖いような申し訳ないような気持ちになって。」
「え? ESね。」
「はい。」
「う~ん。そうねぇ。どうかなぁ。けど何で?」
「いや。実は今日、病棟の倉庫にあった古いカルテを見たら、
そう話しながら、野間は思い出していた。
あれはこの病院に就職してすぐの事だった。主任に連れられ、
貴重な体験である。野間はすぐに、見たいと答え、
保護室とは、症状の重い患者を、
入口付近に着くと、中から怒鳴り声が聞こえる。
「おい! 俺はどこも悪くねぇよ。キチガイ扱いするんじゃねぇ!!」
それに対応して、冷静な声。
「落ち着きなさい。いい? あなたは、どうしてここに連れてこられたか分からないのですか?
「うるせえ! そんなの知らねぇよ!」
野間は、ドキドキしながらも、 入口に立つドクターや看護師らの隙間から中を覗いた。
狭い個室の中では、目が血走った大柄な男性患者と看護師がいた。
看護師は70歳ぐらいだろうか。小柄な老齢の看護師。 冷静な声で話している。
狭い個室の中では、目が血走った大柄な男性患者と看護師がいた。
看護師は70歳ぐらいだろうか。小柄な老齢の看護師。
「あなたのために言っているの。 このままだと色んな人を傷つけるし、 それは回ってあなた自身を傷つけることになるのよ。」
口調は冷静ながら、一歩も引かない迫力に押されたのか、 患者が口ごもる。
老齢の看護師が「このベッドに横になりなさい。」と言うと、「 何だこのやろう!」など抵抗しながらも、なんとか横になった。
老齢の看護師がにらみ続ける中、別の看護師たちが、 素早く口に木片を噛ませ、こめかみにジェルを塗った。 間髪入れず、ドクターの掛け声。看護師たちが一斉に手をはなし、 一歩後ろに下がる。 ドクターは両手に持った電極で患者のこめかみを挟む。患者は、 弾かれたように痙攣をし始めた。「ゔーっ! ゔーっ!」何度も何度も唸りながら。やがて、痙攣が収まり、 体が硬直し始める。胸はこれでもかというほどのけぞり、 手足はこれ以上ないくらいに伸びている。それを、 ベッドサイドで冷静に抑える看護師たち。老齢の看護師は、 腕時計の針を見て時間を測っている。
しばらくして、「かはーっ」大きく息が吐き出され、 体の硬直が解けた。
すると、看護師たちが、手慣れた手つきで、木片を外したり、 おむつを履かせたりしている。 患者は完全に気を失っているようだ。
野間は、出てきたドクターと目が合った。あっけにとられている野間にドクターが言った。
口調は冷静ながら、一歩も引かない迫力に押されたのか、
老齢の看護師が「このベッドに横になりなさい。」と言うと、「
老齢の看護師がにらみ続ける中、別の看護師たちが、
しばらくして、「かはーっ」大きく息が吐き出され、
すると、看護師たちが、手慣れた手つきで、木片を外したり、
野間は、出てきたドクターと目が合った。あっけにとられている野間にドクターが言った。
「これで終了。どうだ? 驚いただろう?」
野間は声が出せなかった。それを見て、ドクターは更に続けた。
「これは善か悪か? どっちだろうか?」
そう言って、ニヤリとして去っていった。
野間は声が出せなかった。それを見て、ドクターは更に続けた。
「これは善か悪か? どっちだろうか?」
そう言って、ニヤリとして去っていった。
(つづく)
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