すると、山田はスッと立ち上がり、 自室に向かって歩いて行ったので、 野間もとりあえずついていくことにした。
野間が部屋に入ると、山田が笑顔で待っていた。
「よう! 新人! 分かったかい?」
「えっと、あの」
野間が言いよどんでいると、すかさず山田が言った。
「はっはっは。まあ最初は分からなくて無理ねえよ。」
野間はホッとした。
「いいか。今日、看護人がいただろ。」
「看護人? 看護師のことですか?」
「は? 何言ってんだよ。女は看護婦で、男は看護人だろうよ。」
「ああ。そうですね。それで、看護人がどうしたんですか?」
「あいつの靴下だ。」
「靴下?」
「おう。そうよ。 看護人の靴下が赤い時は電パチやるっていうサインだ。」
「電パチ?」
「は? お前そんなことも知らないのか?! 電気ショックだよ。電気ショック。 あいつらはESって暗号で言ってるけどな。俺は知ってんだよ。 俺はスパイの40年選手だからな。」
そう言って、山田は楽しそうに笑った。
「よう! 新人! 分かったかい?」
「えっと、あの」
野間が言いよどんでいると、すかさず山田が言った。
「はっはっは。まあ最初は分からなくて無理ねえよ。」
野間はホッとした。
「いいか。今日、看護人がいただろ。」
「看護人? 看護師のことですか?」
「は? 何言ってんだよ。女は看護婦で、男は看護人だろうよ。」
「ああ。そうですね。それで、看護人がどうしたんですか?」
「あいつの靴下だ。」
「靴下?」
「おう。そうよ。
「電パチ?」
「は? お前そんなことも知らないのか?! 電気ショックだよ。電気ショック。
そう言って、山田は楽しそうに笑った。
野間は緊張した。急に、 苦手な話題のESの話が出てきたからである。
しかし、山田はかまわず続ける。
「いいかい、新人。よく聞くんだ。 看護人が赤い靴下を履いている時は、 この中の誰かが電パチを受ける。青の時は不潔部屋だ。」
「不潔部屋?」
「あるだろ、看護人の詰所の後ろに。」
「ああ、保護室のことですか?」
「保護室? なんだそれ。不潔部屋は不潔部屋だろうよ。何言ってんだよ。 まあいいや。いいか、けど看護婦がいると厄介なんだ。 看護婦が一人と看護人一人だと、靴下の色は紫が電パチだ。 それから、看護人が二人だと、」
山田が多弁に話し続ける。
しかし、山田はかまわず続ける。
「いいかい、新人。よく聞くんだ。
「不潔部屋?」
「あるだろ、看護人の詰所の後ろに。」
「ああ、保護室のことですか?」
「保護室? なんだそれ。不潔部屋は不潔部屋だろうよ。何言ってんだよ。
山田が多弁に話し続ける。
野間は、矢継ぎ早に話される、その妄想話に圧倒された。しかし、 それと同時に、靴下の話は妄想だと指摘したい衝動に駆られた。 今は、ESもほとんど行われていないし、看護人は看護師、 不潔部屋は保護室なんだと。それは妄想なんだと。
けど、先輩の言った室長語録が耳に残っていた。 クライエントの世界に飛び込めと。
野間は思いとどまり、また山田の話に耳を傾けた。
野間は思いとどまり、また山田の話に耳を傾けた。
どのくらい時間が経っただろうか。ふと、山田の話が止まった。
野間が、はっと顔を向けると、山田が言った。
「いやぁ。うれしいよ。こうして話を聞いてくれる仲間がいて。」
野間はドキッとした。それまでの妄想の発言ではなく、 正気の本心に聞こえたからだ。
野間が、はっと顔を向けると、山田が言った。
「いやぁ。うれしいよ。こうして話を聞いてくれる仲間がいて。」
野間はドキッとした。それまでの妄想の発言ではなく、
(つづく)
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