2014年8月7日木曜日

精神保健福祉士と自由を望まぬ人24

 「はい。どうぞ。」
 無機質な声が返ってきた。
 野間は、深呼吸し、思い切ってドアを開けて中には入った。
 「おう。これはこれは野間さん。どうしました?」

 中にいたのは、この病院で唯一の心理職、臨床心理士の福田だ。
 中年の小太りの男性。不機嫌なわけではなく、いつも無表情。それに、性格というか、性質にやや問題がある。

 「野間さんが来るということは、ドクターの心理検査の処方箋を持ってきたのですか? いや、それは看護助手の仕事だ。看護助手もこの業務を病棟から出る息抜きに使っているから、そう簡単に代役を頼むはずはない。病棟看護人員も今日は不足ないはずだ。いま病棟で特段大きな病状悪化の患者もいない。ということは、精神保健福祉士の野間さんが持ってくるのは不自然だ。妥当性がない。それとも、患者のコンサルを求めに来たのですか? それとも。」
 「いやいや。実は折り入って相談があって来ました。」

 野間は、予想通りの福田の反応に「出た。めんどくさい。」と心で思った。
 一言言うと、10の理屈が帰ってくる。本人は理論建てているつもりなのだろうが、回りくどくて人を辟易とさせる。そして、それに気づいていない。相手の感情を理解し辛いようで、自分で発達障害のアスペルガー症候群だと公言している。
 ただ、知能指数は明らかに高いらしい。普通100ぐらいであるところを、170あるのだと自慢しているのを聞いたことがある。
 最初の挨拶で、いつも「アスペの心理士、福田です。」と自己紹介をする。これは先輩がアドバイスしたらしい。それ以来、言葉は悪いが、いわゆる先輩になついている。先輩のようにユーモアのある振る舞いをしたいのだそうだ。


(つづく)



 

0 件のコメント:

コメントを投稿